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東北大学応用物理学専攻安藤研究室

研究内容RESEARCH TOPICS

面直通電型巨大磁気抵抗素子 (CPP-GMR素子)

 次世代のハードディスク用ヘッドとして、面直通電型巨大磁気抵抗 (CPP-GMR) 素子への期待が高まっています。CPP-GMR素子は、強磁性薄膜/非磁性金属薄膜/強磁性薄膜の積層構造をもっていますが、素子の膜面直方向に電流を流すことが特徴です(下図)。素子の横方向に電流を流す、従来のGMR素子に比べて磁気抵抗効果が原理的に大きくなり、また、すべての層が金属膜なので、素子の抵抗を小さくすることに対して大きなアドバンテージを有しています。

 しかし、これまでのCPP-GMR素子は、素子抵抗値を小さくできる反面、トンネル磁気抵抗素子に比べて磁気抵抗効果が小さく、また、次世代ヘッドに要求される値にも到達していませんでした。従って、CPP-GMR素子における高磁気抵抗化のための、新しい技術(イノベーション)が必要であると考えられていました。



ホイスラー合金を用いたCPP-GMR素子

 安藤研究室では、これらの問題を解決するために、強磁性層にハーフメタルホイスラー合金を用いたCPP-GMR素子を開発しました。ハーフメタルとは、ハーフメタル中を流れる電流を担う電子が、上向き、または、下向きのスピンのみを有する材料です。

 磁気抵抗効果は、強磁性層のスピンの偏極率 (上向きスピンと下向きスピンの割合) が大きいほど大きくなるため、ハーフメタル材料はスピン偏極率が100%の、いわば理想的な強磁性体材料といえます。ホイスラー合金は、X2YZの組成で、L21構造と呼ばれる、原子が規則正しく配列した構造を有しており、室温でも高いスピン偏極率を実現可能な材料です。

 安藤研究室では、Co2(Fe0.4Mn0.6)Siホイスラー合金/Ag非磁性金属/Co2(Fe0.4Mn0.6)Siホイスラー合金の三層CPP-GMR構造において、室温で70%を超える非常に大きな磁気抵抗比を実現しました。下図に、開発したCPP-GMR素子の磁気抵抗曲線 (磁界に対する素子抵抗の変化率を示したもの) を示します。得られた磁気抵抗比は、他グループから報告されているCPP-GMR素子のそれに比べて圧倒的に大きな値です。


ホイスラー合金CPP-GMR素子の次世代HDDへの応用

 ハードディスクは、多数の磁石でできた記録媒体と磁気ヘッドと呼ばれる素子で構成されています。それぞれの磁石の向きを、書き込みヘッドから出る磁界で制御することで情報の書き込みを行い、また磁石から漏れ出る、微小な磁界を読み取りヘッドで検出することで情報の読み出しを行なう仕組みになっています。

 ハードディスクの記録密度を向上させるためには、記録媒体中の磁石の大きさを小さくする必要がありますが、磁石を小さくすると、漏洩する磁界の大きさも小さくなるため、高感度な読み出しヘッドが必要になります。また、磁気ヘッドの抵抗値は、転送速度を向上させるために小さくする必要があります。

 下図に磁気抵抗比と抵抗のグラフ中に、安藤研究室の成果の位置づけを示します。磁気抵抗比および素子抵抗値は、1平方インチ当たりに5テラビットの超大容量情報記憶が可能な、ハードディスクヘッドのターゲットエリアに世界で初めて到達しました。この成果により、今後の次世代磁気ヘッドの開発は、ハーフメタルホイスラー合金を用いたCPP-GMR素子を中心に展開されていくものと考えられます。

東北大学大学院応用物理学専攻
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