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JST戦略的イノベーション創出推進プログラム 「スピン流を用いた新機能デバイス実現に向けた技術開発」

トンネル磁気抵抗素子を用いた心磁図および脳磁図と核磁気共鳴像の室温同時測定装置の開発

研究内容RESEARCH

研究項目@ 高磁界感度トンネル磁気抵抗素子の開発

 東北大学大学院工学研究科のグループでは、トンネル磁気抵抗素子の技術を高感度磁気センサーへ応用する研究を行なっています。磁界感度=TMR比 / 2Hk, (Hk : 異方性磁界) は、磁気抵抗比の向上と異方性磁界の微小により向上させることができますが、実際には困難軸方向のヒステリシスループが開いたり、直線性が良くなかったりで、素子構成を目的に応じて最適化させる必要があります。生体からの非常に微弱な信号を検出するためには、すくなくとも、磁界感度が100%/Oe程度以上が必要ですが、従来のTMR素子においては数%/Oe程度に留まっていました。
 東北大学工学研究科のグループとコニカミノルタテクノロジーセンター(株)は、共同で素子構造の最適化により磁界感度が25%/Oeの素子作製に成功しました。さらに最近では、アモルファス強磁性体を用いることにより、40%/Oeにまで感度を向上させることに成功しています。この素子はまだまだ改良の余地を十分残しており、目標とする100%/Oeの磁界感度を達成し、生体からの微弱な信号を検出することも現実見をおびてきています。
 微弱信号のSN比を向上させる方法として、トンネル接合を直並列にアレイ状に配置することが提案されています。そこで、東北大学工学研究科のとコニカミノルタテクノロジーセンター(株)は共同でアレイ状素子を作製し、SNの評価を行なっています。現在はまだ2 x 2のアレイですが、すでに低周波領域のノイズが低減出来る可能性を示すデータが得られています。本プロジェクトでは、このアレイ規模を数百まで大きくし、大幅なSN比の改善を目指しています。


図 トンネル磁気抵抗単体素子の熱処理プロセス後の磁気抵抗曲線。300℃の熱処理温度にて、磁界に対して線形なTMR比の変化がみられており、磁界感度が40%/Oe(図(b))という非常に高い感度を実現している。

研究項目A 微小モジュールの試作

 脳からの磁場を頭全体から検出し、磁場マップを作成するためには、多くの素子をできるだけ頭皮に接触させて磁気抵抗効果を測定する必要があります。このためには、外部の磁界をキャンセルさせる構造を有するトンネル磁気抵抗素子を複数個配置したモジュール、および、素子からの信号を増幅させる回路などを開発する必要があります。コニカミノルタテクノロジーセンター(株)においては、このためのテスト試作を始めています。これまでに接合を組み込んだモジュールを試作し、信号測定を行なっています。


図 トンネル磁気抵抗センサーモジュール

研究項目B 試作素子を用いた臨床評価

 本プロジェクトでは、試作したトンネル磁気抵抗センサー素子を用いて、心磁図・脳磁図の計測を行います。東北大学医学系研究科のグループでは、これまで主にてんかんという病気においては脳内の局所的な電流の存在と大きく関係していることを、SQUIDを用いて測定した磁場図を基にして明らかにしてきています。このときの脳磁場測定装置の設計に関しても係わってきており、脳磁場測定装置のノウハウを有しています。



図 脳磁図解析と脳内電流の推定の例


研究項目C 核磁気共鳴素子の開発

 脳の位置情報である核磁気共鳴図(MRI)を測定するため、トンネル磁気抵抗素子を用いた新規の核磁気共鳴装置を開発することを計画しています。この装置は心磁場、脳磁場測定のユニットと同一のものであることが望ましいですが、これまでトンネル磁気抵抗素子を利用した核磁気共鳴装置は研究されていません。そもそも、低磁界で核磁気共鳴を測定することは近年になってようやくSQUIDを用いたものが研究されてきているものの、もともと磁界感度が足りない磁気抵抗素子を用いることは不可能であるとの認識でした。しかし、磁気抵抗素子の磁気抵抗比を高くし、低磁場における核磁気共鳴信号の検出可能性を示したいと考えています。そのためには、核磁気共鳴を得るための静磁場とRF磁場の印加方法、測定回路など、基本的な測定のための原理の構築、要素技術の確立が必要であると考えられます。


図 開発する装置の概念図。磁気抵抗センサー素子と核磁気共鳴素子を同一ユニットとすることで、脳磁図と核磁気共鳴像の同時測定が可能になります。

バナ

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