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東北大学応用物理学専攻安藤研究室

おうぶつニュースレターSELECTION

東北大学応用物理学コース・応用物理学専攻で発行している、ニュースレター「おうぶつ」より、研究室に関わる情報を抜粋して紹介します。過去のニュースレター「おうぶつ」は、こちらからダウンロード可能です。


DC進学の勧め (平成16年博士修了 佐藤 雅重 おうぶつ第2号より)

 応用物理学専攻を修士で卒業して15年になります。当時の宮ア研究室(今の安藤研究室)で修士2年の時、先生が博士課程への進学を勧めてくれたのですが、私はあまり深い考えも無く単に早く社会に出て金を稼ぎたいとの思いで、それを断って前職の富士通に就職しました。

 入社してからは、ずっとハードディスクのリードヘッド材料(TMR)の研究に従事してきました。たまたま長く同じテーマで研究を続けられたことと、周りの方々の協力のおかげで、卒業してから6年後に再び応用物理学科に社会人博士課程で入学し、4年かけて何とか博士の学位を取得することができました。そういった経緯もあり、ずいぶん長く応用物理学科にお世話になっています。学科の先生には事あるごとにいろいろと相談に乗って頂きました。もう卒業してかなりたちますが、先生方は今でもとても温かく迎えてくれ、そのたびに、改めて応用物理学科の家庭的な魅力を感じています。

 最近は、社会人で博士課程に入学する方も増えてきましたが、やはり営利を追求する企業で、一つのテーマを深く研究する機会はそれほど多くありません。私はたまたまTMR の黎明期で、モノになるかどうか微妙な状況で長く研究を続けることができ、学位まで取得できたのは非常に恵まれた環境だったと思っています。しかし、博士の学位を取得して社内で何かが変わったかというと、実際はあまり変わっていません。会社にもよりますが、給料も変わりませんし、昇進に学位が必要という訳でもありません。社内で博士の学位そのものが評価される訳ではありません。社内で評価されるのはあくまで成果であり、研究の遂行能力です。

 それでは博士の学位は企業ではあまり必要ないのかというと、決してそうではありません。周りにも博士課程を卒業して入社してくる若者が何名もいますが、彼らの研究への取り組み方や進め方は、やはり一味違うなと感じます。修士の学生も会社で3年たてばそれなりになりますが、やはり博士課程での3年との差は時間がたてば埋まるものではないと感じています。博士の価値はその肩書ではなく学位を取得するに至るプロセスであり、厳しく鍛えられて培われた研究能力であると思います。私も社会人博士課程の4年間で少しは成長できたと思ってはいますが、やはり博士課程を出て就職するのとは意味が違い、修士の時点で博士課程に進むことをもう少し真剣に考えれば良かったと思うこともあります。

 学科も研究室も、職場も、自分自身が成長するためのフィールドの一つだと思います。様々な選択肢がある若い方々はとても羨ましいですが、これから学科を選んだり、修士や博士課程への進学を選んだり、就職先を選んだりする時には、儲かっている分野だからとか、給料が高いとか、モノづくりは大変そうだからとか、損得の基準ではなく、是非「そのフィールドで自分自身はどう成長したいのか」という観点で物事を考えて欲しいと思います。

 応用物理学科は著名な先生方も揃っており、また幅広い技術分野を学ぶことが出来る素晴らしいフィールドだと思います。また、モノづくり業界は厳しい部分もありますが、裾野の広い応用物理学科の学生が活躍できる、非常にやりがいのある分野だと思っています。ぜひ、多くの若い方々が応用物理学科に進学し、学び、成長し、社会(できればモノづくりに関わる分野)で活躍されることを心から期待しています。


東北大学大学院応用物理学専攻
安藤研究室

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