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東北大学応用物理学専攻安藤研究室

おうぶつニュースレターSELECTION

東北大学応用物理学コース・応用物理学専攻で発行している、ニュースレター「おうぶつ」より、研究室に関わる情報を抜粋して紹介します。過去のニュースレター「おうぶつ」は、こちらからダウンロード可能です。

平成26年度就職状況 (平成26年度就職担当 工藤 成史 おうぶつ第19号より)

   大卒のサラリーマンの生涯賃金は平均2.5億円ほどになると言います。就職担当として企業の方とお話しする中で、このような数字が話題になることがありました。企業が人を雇うということは、その人に対してそれだけの投資をすることになります(さらに社会保険料の企業負担分なども加わります)。人事担当者が、緊張感を持って採用業務に向き合っていることが伺えます。思い返すと、私が企業に勤めていた時にも、このような数字を耳にすることがありました。社員としては、その金額に見合うだけの仕事をしなければならないというニュアンスが伝わってきたことを覚えています。ここで視点を変えて、賃金がどのように決まるのかというお話に触れておきたいと思います。池上彰さんと佐藤優さんの著書「希望の資本論」(朝日新聞出版、2015)によりますと、労働者の賃金は次の3つの要素により決まるというのがマルクス経済学の考え方だそうです。@衣食住の経費とちょっとのレジャー費で、月給であれば次の1ヶ月も働けるエネルギーを蓄えるための費用、A家族を養い、次世代の労働力を生産するための費用、B技術革新に備えて、本人が自己学習する費用。三つの中のBのファクターは、研究開発に携わる人間のあり方とも関わっており、納得できるものがあります。 前置きが長くなりましたが、平成26年度の卒業生・修了生の就職状況を報告させていただきます。求人票を送付してくださった会社は158社、そのうち117社から推薦依頼がありました。これらの数字は、前年度とほぼ同じでした。年度によっては学生の推薦希望が重複して調整に苦労することがあったと聞いていましたが、今回はあまり重複希望がありませんでした。学生諸君の興味が広がったのか、たまたまであったのか、定かではありません。ひとつ特徴的だったのは、弱電メーカーを第一希望とする学生の比率が、昨年度に続いて低かったことです。これは、業界の中核となる企業の業績低迷がマスコミで盛んに報じられた影響を受けたものと思われます。 結果としては、表に示しましたように、例年通り電気関連の企業への就職が多めではありましたが、他の様々なジャンルの企業に就職した例も多く、企業側の多様なニーズに応物出身者のポテンシャルが合致した結果であろうかと推測しています。その一方で、ジョブマッチングに力を入れている企業の場合、応物出身者に対するバリアーが高くなる傾向が感じられました。私が大学院を出て企業の採用試験を受けた際には、「大学でやってきたこととは無関係なことでもやれるか」と問われました。考えてみれば、会社に入ってから定年まで同じ仕事をする人は極めて稀なはずです。入口を狭めた採用方式の妥当性を、企業の側がどのように検証されているのか、素朴な疑問を感じています。 企業が技術革新を継続して一定の業績を挙げ続けることが、日本の経済力の維持につながり、社会の安定をもたらし、ひいては世界の平和にも貢献していく、そんな未来像を描き続けていきたいものです。前掲書によると、Aの費用を圧縮しようとする資本主義の性のようなものが人口減少につながり、結果的に資本主義の首を絞めるというような問題があり得るということです。企業の経営者が短期的視点に立てば、Bの費用の必要性も軽視される可能性があります。しかし、研究開発に携わる人間が自己研鑽を放棄してしまえば、日本経済はじわじわと低落していくことを避けられないと思います。応物を今春巣立っていった諸君がなお一層の精進を積まれ、元気に活躍されることを願っています。


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