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東北大学応用物理学専攻安藤研究室

研究内容RESEARCH TOPICS

スピン注入磁化反転

 強磁性トンネル接合素子を100ナノメーター程度まで微細にすると発現する、興味深い現象の一つが『スピン注入磁化反転』です。スピン注入磁化反転とは、素子に垂直に電流を流すことで、一方の強磁性電極 (膜厚が薄い方) の磁化の向きを反転させる現象です。スピン分極した電流 (電子)は強磁性層の磁化に角運動量を受け渡し、それが磁化反転トルクとなって反転を引き起こすのです。平行から反平行、反平行から平行磁化状態への反転は、素子に流す電流の向きを変えることで制御可能です。

スピン注入による磁化反転

スピン注入磁化反転のMRAMへの応用

 スピン注入磁化反転は、ギガビットクラスの大容量かつ超低消費電力のMRAMを実現するためには必要不可欠の技術です。従来のMRAMの情報書き込みは、電流が作る磁場による磁化反転を利用していましたが、強磁性トンネル接合素子のサイズが小さくなると(高集積化しようとすると)、反転に必要な電流が大きくなってしまう問題がありました。一方、スピン注入磁化反転電流は素子サイズに比例する為、素子が小さくなればなるほど書き込み電流を小さくできます。夢のユニバーサルメモリを実現するためにはスピン注入磁化反転技術の確立が必要不可欠です。スピン注入磁化反転型の磁気抵抗メモリはSpin-RAMと呼ばれています。

MRAMの動作原理の違い


Spin-RAMの実現に向けて

 Spin-RAMが、現在の半導体メモリを超えるためには、強磁性トンネル接合素子が満たすべき特性がいくつかあります。それは、高出力化、低消費電力化、高熱安定性の3つです。
 
 高出力化はTMR比を大きくすること、低消費電力化はスピン注入磁化反転電流を小さくすること、高熱安定性は強磁性体の磁気異方性を大きくする (熱揺らぎによる磁化反転を防止する) ことにそれぞれ対応しています。これら3つの特性を同時に満たすためには、スピン分極率が大きく、磁気異方性が大きく、かつ、磁気緩和 (摩擦) 係数が小さい強磁性体材料の開発が必要になります。

 しかしながら、これらすべてを高い性能レベルで兼備する強磁性体材料は、今のところ見当たりません。安藤研究室では、新しい強磁性体材料として、Mn系の垂直磁化強磁性体の開発を進めています。現在までに、20ナノメートルサイズのメモリ素子に適用可能な、高磁気異方性と低磁気緩和係数を有するMn系強磁性薄膜の作製に成功しています。

 新規Mn系垂直磁化材料を用いた強磁性トンネル接合の作製に成功すれば、Spin-RAMは勿論のこと、不揮発性磁気論理回路の実現も期待されます。

東北大学大学院応用物理学専攻
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