本文へスキップ
東北大学応用物理学専攻安藤研究室

研究トピックRESEARCH TOPIC

次世代HDDヘッド用 CPP-GMR素子の開発


ハーフメタルホイスラー合金電極CPP-GMR素子において、室温で74%の磁気抵抗比の観測に成功


 安藤研究室は、ハーフメタルホイスラー合金を用いた面直通電型巨大磁気抵抗素子 (CPP-GMR素子) において、室温で74%の磁気抵抗比を観測することに成功しました。研究成果を論文発表し(J. Sato et al., APEX,4 (2011) 113005)、また2011年9月30日にプレスリリースを行いました。

 現在、高性能ハードディスクの信号読み取りヘッドとして用いられている、強磁性トンネル接合素子の基本構造は、磁石の性質を持つ薄膜(強磁性膜)2枚で非常に薄い絶縁膜を挟んだ構造をしています。しかし、この素子構成では、信号出力は大きい反面、磁気ヘッドの高速データ転送に必要な低抵抗素子を実現することが原理的に困難でした。一方で、次世代のハードディスク磁気ヘッドとして期待が大きいCPP-GMR素子は、強磁性膜2枚で薄い非磁性金属を挟んだ構造をしています。従来のCPP-GMR素子は、オール金属で構成することで、低抵抗素子を実現可能な反面、磁気抵抗比が小さいことが大きな課題でした.

 今回、安藤研究室では、CPP-GMR素子の強磁性膜にハーフメタルホイスラー合金を用いることで、1平方インチ当たり5テラビットクラスの記録密度を有する、超高密度ハードディスクヘッドに適用可能な素子を世界で初めて開発することに成功しました。現在、情報家電や携帯機器などへの大容量情報記憶へのニーズは益々増していますが、開発したハーフメタルCPP-GMR素子は、その要求を満たす超高密度ハーディデスクの実現に大きく寄与するものと期待されます。

 以下の磁気抵抗比と抵抗のグラフ中に、本研究成果の位置づけを示します。本研究で得られた、磁気抵抗比および素子抵抗値は、1平方インチ当たりに5テラビットの超大容量情報記憶が可能な、ハードディスクヘッドのターゲットエリアに世界で初めて到達しています。この研究成果により、今後の次世代磁気ヘッドの開発は、ハーフメタルホイスラー合金を用いたCPP-GMR素子を中心に展開されていくものと考えられます。

 この成果は、日本経済新聞社による、2011年度「技術トレンド調査」において、評価の高い技術 第1位に選ばれました(掲載された記事はこちら)。(技術トレンド調査:大学や企業など国内の研究機関が2010年12月から12年11月に公表した技術開発成果(今年度の対象は203件)を日本経済新聞社が組織した外部の専門家と科学技術振興機構の技術移転プランナーが評価。指標として、実用性、市場性、新規性、学術性、話題性の5項目があり、項目ごとに高い順に3,2,1点で採点し平均点を算出し、各平均点を合計して順位を決定する。)

 本研究は、総務省SCOPEおよび(米)ウェスタンデジタル社の支援により行われました。HDDヘッドの開発に関する詳細については、こちらのページで紹介しています。


東北大学大学院応用物理学専攻
安藤研究室

〒980-8579
宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05

TEL 022-795-7949
FAX 022-795-7947